労働者派遣事業の許可申請における 資産要件を徹底解説

2026.08.20
労働者派遣事業・許可申請の資産要件

許可申請で最も多い不安は“資金面”。まずは資産要件を正しく理解することが許可取得への第一歩です。

労働者派遣事業の新規許可申請を検討されている企業様から最も多く寄せられるご相談の一つが、「資産要件を満たしているか分からない」というものです。

派遣事業は、派遣先から派遣料金を回収する前に、派遣労働者へ給与や社会保険料等を支払う必要があります。そのため、派遣労働者の雇用の安定や適正な事業運営を確保する観点から、許可申請時には一定の財産的基礎が求められています。

本記事では、労働者派遣事業の新規許可申請における資産要件について分かりやすく解説します。

派遣許可における資産要件とは

労働者派遣事業の許可を取得するためには、事業主に一定の財産的基礎があることを証明しなければなりません。

具体的には、主に以下の3つの要件が審査されます。

① 基準資産額が2,000万円以上

基準資産額とは、

総資産-総負債

によって算出される金額を指します。

一般的には純資産額(株主資本)に近い考え方となります。

例えば、

  • 総資産:3,500万円
  • 総負債:1,000万円

であれば、

基準資産額は2,500万円となり要件を満たします。

② 基準資産額が負債総額の7分の1以上

派遣会社が過度な借入に依存していないかを確認するための要件です。

例えば、

  • 基準資産額:2,500万円
  • 負債総額:1億円

であれば、

負債総額の7分の1は約1,429万円となるため要件を満たします。

一方で、多額の借入がある場合にはこの基準を満たせないことがありますので注意が必要です。

③ 現預金が1,500万円以上

派遣事業では給与支払いが先行するため、安定した資金繰りが求められます。

このため、

  • 普通預金
  • 当座預金
  • 定期預金

などの現預金残高が1,500万円以上あることが必要です。

審査時には直近の決算書により確認されます。

「純資産は十分あるが現金が少ない」という場合には、この要件を満たせないケースがありますので注意しましょう。

基準資産額の計算における注意点

派遣許可申請における基準資産額は、単純に貸借対照表の純資産額をそのまま用いるわけではありません。

労働者派遣事業の許可基準では、基準資産額は次の算式により算定されます。

基準資産額 = 資産(繰延資産および営業権を除く)- 負債

ここでいう営業権とは、会社計算規則上の「のれん」を指します。また、繰延資産についても基準資産額の算定上は資産から除外されます。

そのため、決算書上の純資産額が2,000万円を超えている場合であっても、営業権(のれん)や繰延資産が多額に計上されている場合には、許可基準上の基準資産額が2,000万円を下回ることがあります。

例えば、

  • 決算書上の純資産額 2,300万円
  • そのうち営業権(のれん) 500万円

である場合、基準資産額の算定上は営業権を除外して計算するため、基準資産額は1,800万円となり、資産要件を満たさない可能性があります。

特に、M&Aや事業譲渡によって営業権(のれん)が計上されている企業では注意が必要です。

また、資産要件の判定では、単に基準資産額だけでなく、

  • 基準資産額が2,000万円以上あるか
  • 基準資産額が負債総額の7分の1以上あるか
  • 自己名義の現預金が1,500万円以上あるか

も併せて確認されます。

そのため、許可申請を検討する際は、単純に「純資産が2,000万円以上あるから大丈夫」と判断するのではなく、貸借対照表の内容を確認し、営業権(のれん)や繰延資産の有無も含めて事前にチェックしておくことが重要です。派遣許可申請に不安がある場合は、申請前に専門家へ相談し、自社の財務状況が許可基準を満たしているか確認することをおすすめします。
許可申請前によくある失敗事例

決算書上は黒字でも現預金が不足している

最も多いケースです。

売掛金や固定資産が多く、純資産額は十分にあるものの、現預金残高が1,500万円に届かないため申請できないケースがあります。

役員借入金が多い

役員借入金も負債として扱われます。

そのため、負債総額が大きくなり、「基準資産額が負債総額の7分の1以上」という要件を満たせなくなることがあります。

直前の設備投資で資産要件を下回る

派遣許可申請に向けて事務所を整備した結果、多額の支出が発生し、現預金残高が要件を下回ってしまうことがあります。

許可取得を予定している場合は、申請スケジュールを考慮した資金計画が重要です。

営業権(のれん)が計上されており資産要件を満たさなかった

M&Aや事業譲渡により営業権(のれん)が貸借対照表に計上されている場合があります。しかし、派遣許可の審査では営業権が基準資産額として認められないことがあるため、決算書上の純資産額と許可審査上の基準資産額に差が生じます。

その結果、「純資産は2,000万円を超えていると思っていたが、実際には基準資産額が不足していた」という事態も発生します。M&Aを行った企業や事業譲渡を受けた企業は、特に注意が必要です。

まとめ

労働者派遣事業の新規許可申請において、資産要件は許可取得の可否を左右する重要な審査項目です。しかし、単純に「純資産が2,000万円以上あるか」「預金が1,500万円以上あるか」だけを確認すればよいわけではありません。

特に注意したいのは、許可審査における基準資産額は、決算書上の純資産額と必ずしも一致しないという点です。営業権(のれん)などの無形固定資産、繰延資産、内容によっては回収可能性に疑義のある資産等については、資産要件の判定上、考慮方法に注意が必要となる場合があります。

また、現預金要件を満たしていないケースや、役員借入金などの負債が多額であるケースでは、決算書上は問題がないように見えても許可申請が難しくなることがあります。

派遣許可の取得を目指す場合は、

  • 基準資産額が2,000万円以上あるか
  • 基準資産額が負債総額の7分の1以上あるか
  • 現預金が1,500万円以上あるか
  • 営業権(のれん)や無形固定資産等が多額に計上されていないか
  • 申請時点においても要件を維持できているか

を事前に確認することが重要です。

「決算書上は問題ないと思っていたが、実際には資産要件を満たしていなかった」というケースは少なくありません。特に設立間もない会社やM&A後の法人、役員借入金が多い法人については、申請前の確認が欠かせません。
HRストーリーズ社会保険労務士法人では、労働者派遣事業の新規許可申請に関する無料相談を承っております。決算書や試算表をもとに資産要件を満たしているかを事前に確認し、許可取得に向けた最適な進め方をご提案いたします。派遣事業の許可申請をご検討中の企業様は、お気軽にご相談ください。

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特定社会保険労務士として、企業の人事・労務管理支援を中心に、労働者派遣事業および有料職業紹介事業の許可申請・更新手続き、労務監査、就業規則整備、ハラスメント対策など幅広い業務に従事。 特に、労働者派遣事業及び有料職業紹介事業に関する許可申請支援については長年にわたり数多くの案件をサポートしており、新規許可申請から事業運営まで一貫した支援を行っている。 近年は、IT企業、SES企業、人材サービス企業を中心に、派遣法・職業安定法への対応、キャリアアップ教育訓練制度の構築、法改正への実務対応支援に注力している。

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