派遣許可に必要な事業所要件とは

広さだけでは判断できない。派遣許可の事業所は、契約内容・独立性・個人情報管理まで確認が必要です。「20㎡あれば大丈夫」と思って物件を契約する前に。派遣に強い社会保険労務士が、労働者派遣事業の許可申請で確認される事業所要件と、失敗しやすいポイントを分かりやすく解説します。
労働者派遣事業の新規許可申請では、資産要件や派遣元責任者の要件だけでなく、実際に派遣事業を行う「事業所」が許可基準に適合していることも重要です。
事業所要件について、よく「20㎡以上あれば許可を取れる」と理解されていることがあります。しかし、実際の審査では、面積だけで判断されるわけではありません。物件の使用権限、他の会社や事業との区分、個人情報を適正に管理できる設備、面談や相談を行える環境などを総合的に確認する必要があります。
厚生労働省は、労働者派遣事業を行うためには厚生労働大臣の許可を受け、欠格事由に該当しないことに加えて、許可基準をすべて満たす必要があると案内しています。また、許可・更新等手続マニュアルでは、許可基準や申請書類などが示されています。
1.事業所の面積は「おおむね20㎡以上」
厚生労働省の許可申請に関する自己チェックでは、事業所について「おおむね20㎡以上ある」ことが確認項目とされています。HRストーリーズ社会保険労務士法人で実際に使用している新規許可申請の自己チェック資料にも、同様の確認項目があります。
ここで注意したいのが、「おおむね」という表現です。単に賃貸借契約書に記載された面積を見るだけではなく、派遣事業に使用できる範囲がどこまでなのかを確認する必要があります。
例えば、共用廊下、共用ラウンジ、共用会議室などを含めなければ20㎡程度を確保できない物件では、派遣事業所として使用する専有部分の面積を別途確認する必要があります。また、同じ室内で別事業を行う場合や、関連会社と同居する場合には、派遣事業に使用する区画がどこなのかを明確にしておくことが大切です。さらに別会社との同居の場合には、共有や転貸借の契約書を備え、貸主の承諾等も求められます。
面積を確認できる資料として、賃貸借契約書、重要事項説明書、物件図面、貸主または管理会社が発行する面積証明などが考えられます。実際の申請準備でも、賃貸借契約書に加えて、面積を証する資料やレイアウト図面の確認が必要になります。
2.派遣事業に使用できる契約になっているか
賃貸物件の場合は、申請会社がその場所を事業所として使用する正当な権限を有していることを確認します。
特に注意が必要なのは、賃貸借契約書の使用目的が「住居のみ」「倉庫のみ」などとなっているケースです。会社の本店登記ができることと、労働者派遣事業の許可事業所として使用できることは、必ずしも同じではありません。さらに、使用目的が「IT事業」などの特定の事業に限定されている場合も注意が必要です。
契約書の用途欄、特約、転貸禁止条項などを確認し、派遣事業を含む事務所としての使用に問題がないかを検討します。賃貸借契約書の内容によっては、貸主または管理会社との覚書、使用承諾書、転貸承諾書などを求められる場合があります。HRストーリーズ社会保険労務士法人の申請準備資料でも、賃貸借契約書と重要事項説明書の提出を案内し、内容によっては別途覚書等が必要になる旨を明記しています。
したがって、物件を新たに借りる場合は、契約締結前に事業所要件を確認することが重要です。
3.関連会社や他社との同居は特に注意が必要
派遣許可申請において、関連会社や他社との同居事務所は最も慎重な検討が必要なケースの一つです。
実務上、労働局では、
- 派遣事業として独立した事業運営が可能か
- 個人情報や機密情報が適切に管理できるか
- 派遣元責任者が適切に職務遂行できる環境か
- 他社との事業区分が明確か
- そもそも事務所の使用権が確立されているか(同居・転貸借)
といった点を重点的に確認します。
特に、
- 同一室内で複数法人が執務している
- デスクやキャビネットを共用している
- 受付や電話番号を共用している
- 個人情報の保管場所が共用されている
- 従業員の利用区画が明確に区分されていない
といった環境では、許可取得がの可能性はほぼありません。
派遣事業では、派遣労働者の履歴書、職務経歴書、賃金情報、社会保険関係書類など多数の個人情報を取り扱います。そのため、他社や関連会社との区分が不明確な事務所については、個人情報保護や事業運営上の観点から厳格な確認が行われます。
また、関連会社であっても別法人である以上、「グループ会社だから問題ない」という考え方は通用しません。
実際には、
- 専用区画の設定
- レイアウト図による明確な区分
- 鍵付き保管設備の設置
- 派遣元責任者の専用執務スペースの確保
- 派遣事業に必要な設備の独立性
などを総合的に確認することになります。
特に新規許可申請では、事業所契約後に問題点が判明すると、パーテーション工事やレイアウト変更、場合によっては物件の再検討が必要になることもあります。
関連会社や他社との同居を予定している場合は、契約締結前の段階で必ず専門家へ相談し、許可取得に支障がないかを慎重に確認することをおすすめします。
4.個人情報を安全に保管できること
派遣元事業所では、派遣労働者の履歴書、職務経歴、雇用契約、賃金、社会保険、派遣先、教育訓練など、多くの個人情報を取り扱います。
そのため、個人情報を第三者が自由に閲覧できない保管体制を整えなければなりません。実務上は、派遣事業専用の施錠できる収納庫を設置し、その位置を事務所のレイアウト図に記載します。
電子データについても、アクセス権限、パスワード、端末管理などを含め、適正な管理体制を整える必要があります。単に鍵付きキャビネットを置けば終了ということではなく、個人情報適正管理規程と実際の運用が一致していることが大切です。
5.面談・相談に対応できる環境
派遣元事業所では、登録希望者や派遣労働者との面談、就業条件の説明、キャリアコンサルティング、苦情相談などを行うことがあります。
そのため、相談内容や個人情報が周囲に聞こえないよう、プライバシーに配慮した面談環境を整えておく必要があります。完全な個室を設けられる場合は分かりやすいですが、物件の構造や区画方法については個別に確認が必要です。
重要なのは、形式的に「面談スペース」と表示することではありません。相談者が安心して話せること、第三者に会話や資料の内容が漏れないこと、派遣事業所として継続的に利用できることがポイントです。
6.レイアウト図と現況を一致させる
新規許可申請では、事務所のレイアウト図面を準備し提出しなければなりません。HRストーリーズ社会保険労務士法人の申請準備資料では、机、椅子、パーティション、派遣用の個人情報収納庫、研修室・面談室、派遣元責任者および職務代行者の席などをレイアウト図に反映するよう案内しています。
レイアウト図には、一般的に次のような事項を分かりやすく表示します。
- 出入口と受付
- 派遣元責任者の執務場所
- 職務代行者の執務場所
- 面談・相談スペース
- 派遣事業用の鍵付き収納庫
- 机、椅子、パーティション
- 社名表示の位置
- 他社・他事業との境界(同居の場合のみ)
図面だけを整えるのではなく、申請時の事務所の現況と一致していることが重要です。
7.レンタルオフィス・シェアオフィス・自宅は慎重に判断
レンタルオフィス、シェアオフィス、自宅兼事務所については、名称だけで許可の可否を判断することはできません。
専有面積、使用契約、独立性、施錠、面談環境、個人情報管理、生活空間との区分などによって判断が異なります。住所利用や登記だけが可能なバーチャルオフィスについては、実際に派遣事業を行う事業所としての実体を示すことが難しいため、物件を契約する前の確認が欠かせません。
また、運用や提出資料については管轄労働局への事前確認が必要になる場合があります。事業所の契約後に要件不足が判明すると、移転、追加工事、契約変更などが必要になり、申請計画全体に影響します。
まとめ
派遣許可の事業所要件は、「おおむね20㎡以上」という面積要件だけではありません。
確認すべき主なポイントは次のとおりです。
- 派遣事業所として使用する部分がおおむね20㎡以上あるか
- 申請会社が事業所を適法かつ継続的に使用できるか
- 賃貸借契約上、事務所・派遣事業としての使用に問題がないか
- 他社・他事業と適切に区分されているか
- 個人情報を安全に保管できるか
- 面談や相談のプライバシーを確保できるか
- レイアウト図と実際の設備・運用が一致しているか
物件の種類や契約形態によって必要な確認は異なります。「まだ物件を契約していない」「レンタルオフィスで取得できるか知りたい」「関連会社と同じフロアで申請したい」という段階で相談することが、余計な費用や手戻りを防ぐ最も有効な方法です。
HRストーリーズ社会保険労務士法人では、労働者派遣事業の新規許可申請に関する無料相談を承っています。賃貸借契約書、物件図面、レイアウト案などを確認し、派遣事業所として申請できる可能性や、申請前に整えるべき事項をご案内します。物件を契約する前でも構いません。派遣許可の事業所選びで迷われている企業は、お気軽にお問い合わせください。




