派遣元事業主は、派遣労働者のキャリア形成を行うために、定められた条件を満たすキャリア形成支援制度を有しなければなりません。
今回は、派遣労働者キャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画について、必要とされる教育訓練計画の内容の判断基準について確認しておきましょう。
1.派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること。
教育訓練計画の内容の判断
- 実施する教育訓練がその雇用する全ての派遣労働者を対象としたものであること。
ただし、実際の教育訓練の受講にあたり、以下の者については、当該教育訓練は受講済みであるとして取り扱うことができる。
(ⅰ)過去に同内容の教育訓練を受けたことが確認できる者
(ⅱ)当該業務に関する資格を有している等、明らかに十分な能力を有している者
なお、受講済みとして取り扱うことができる派遣労働者であっても、当該派遣労働者が当該教育訓練の受講を希望する場合は、受講させることが望ましいこととされています。 - 実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。
教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする。ただし、派遣元事業主において時間を管理した訓練を実施することが困難であることに合理的な理由がある場合(例えば、派遣元事業所と派遣先の事業所との距離が非常に遠く終業後に訓練を行うことが困難である場合であって、eラーニングの設備もない場合)については、キャリアアップに係る自主教材を渡す等の措置を講ずることとしても差し支えないが、その場合は、当該教材の学習に必要とされる時間数に見合った手当を支払うものであることとされています。
また、これらの取扱は就業規則又は労働契約等に規定することとされています。なお、派遣労働者が段階的かつ体系的な教育訓練を受講するためにかかる交通費については、派遣先との間の交通費より高くなる場合は派遣元事業主において負担すべきものであることとされています。 - 実施する教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること。
教育訓練の内容は、派遣元事業主が一義的に定めるものであるが、派遣労働者としてより高度な業務に従事すること、派遣としてのキャリアを通じて正社員として雇用されることを目的としている等、キャリアアップに資するものであること。具体的に資する理由は、キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2)において記述することとされています。
複数の訓練コースを設けることも可能であり、訓練内容によって対象者が異なっても差し支えない。なお、ヨガ教室や趣味的な英会話教室、面接対策とは異なるメイクアップ教室のような、派遣労働者の福利厚生を目的とした明らかにキャリア形成に無関係なものは含まれない。派遣元事業主は、当該教育訓練計画についてキャリアアップに資する内容であることを説明できなければならない。 - 派遣労働者として雇用するにあたり実施する教育訓練が含まれたものであること。
訓練内容に、入職時に行う訓練が含まれていること。短期雇用の者であっても当該訓練を受講させることができるよう、派遣元事業主と派遣先とが互いに協力することが望ましいこととされています。 - 無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること。
派遣元事業主は、無期雇用派遣労働者に対する教育訓練計画が長期的なキャリア形成を念頭とする内容であることを説明できなければならないこととされています。
教育訓練の実施形態に関する判断
教育訓練の実施形態は、通常の業務を一時的に離れて行う教育訓練(OFF JT:Off The Job Training)のみならず、日常の業務につきながら行う教育訓練(OJT:On The JobTraining)のうち計画的に行うものを含めていても差し支えないこととされています。
段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画の作成は、労働者派遣事業の許可申請を行う中で、最もハードルが高いものかもしれません。
HRストーリーズ社会保険労務士法人では、教育訓練の実施計画についてのコンサルティングも承ります。お気軽にお問い合わせください。