労働者派遣契約を締結するにあたり、派遣先等は、あらかじめ派遣元に対して「派遣先が雇用する労働者の待遇その他の情報」を提供しなければなりません。派遣先等から情報提供がなければ、派遣元は労働者派遣契約を結んではなりません。
労働者派遣の役務の提供を受けようとする者があらかじめ派遣元に提供しなければならない情報等とは、労働者派遣に係る派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金その他の待遇等に関する情報です。
情報提供等の意義
派遣元は、派遣労働者(派遣元で雇用する労働者)と派遣先に雇用される通常の労働者との間で、均等・均衡待遇を確保する義務を負っています(労働者派遣法第30条の3)。
そのために、派遣元、派遣労働者の均等・均衡待遇を確保するため、派遣先の労働者の待遇等に関する情報が必要となることから、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者(派遣先等)に対し、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、比較対象労働者の待遇等に関する情報提供義務を課すこととしたものです。
比較対象労働者の内容
比較対象労働者とは、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者(派遣先等)に雇用される通常の労働者であって、その業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)が、当該労働者派遣に係る派遣労働者と同一であると見込まれるものです。ただし、条件に該当する者がいないときは、それに準じるその他の当該派遣労働者と待遇を比較すべき労働者を選定します。
なお、比較対象労働者の選定に際しては、派遣労働者が就業する場所にとどまらず、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者(派遣先等)の事業所全体の労働者が対象となることに留意が必要である。
「通常の労働者」とは、いわゆる正規型の労働者および期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(無期雇用フルタイム労働者)を指します。
「職務の内容」とは、業務の内容および責任の程度をいい、中核的業務が実質的に同一であり、責任の程度(授権されている権限の範囲、求められる役割、トラブル発生時の対応、目標設定等、所定外労働時間の頻度など)との差異が著しく異なっているかを見て判断します。
「人材活用の仕組み」とは、職務の内容および配置の変更の範囲(転勤、昇進を含む人事異動や本人の役割の変化等)を指します。全国転勤やエリア転勤の区別を含む転勤の取り扱いが同じであり、職務の内容の変化の範囲等も同じであるかが、判断のポイントとなります。
比較対象労働者の6種類のパターン
比較対象労働者としては、次の6種類のパターンが考えられます。
- 職務の内容と人材活用の仕組みが同一の通常の労働者
- 職務内容が同一の通常の労働者(1.の該当者がいないとき)
- 職務の内容のうち、業務の内容または責任の程度のいずれかが同一の通常の労働者(1.、2.の該当者がいないとき。以下同様)
- 人材活用の仕組みが同一である通常の労働者
- 上記1.から4.のいずれかに相当するパート・有期雇用労働者
- 仮想の通常の労働者(同一の職務内容で通常の労働者を雇い入れたと仮定)

比較対象労働者が同じ分類に複数の労働者が該当するときは、基本給の重要な決定要素(職能給であれば、能力・経験、成果給であれば、成果など)が同じ者、または同一の事業所に雇用されている者を選定します。
具体的な選定方法としては以下が考えられます。
- 1人の労働者
- 複数人の労働者(または雇用区分)
- 過去1年以内に雇用していた1人または複数の労働者
- 標準的なモデル(勤続○年目の一般職など)