派遣労働者の派遣先への雇用制限の禁止

派遣労働者の派遣先への雇用制限の禁止

派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先若しくは派遣先であった者又は派遣先となることとなる者に派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならないこととされています(労働者派遣法第33条第1項)。

例えば、「退職後6箇月間は派遣先に雇用されないこと」等を定める契約は原則として締結できません。

派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはなりません(労働者派遣法第33条第2項)。

例えば、「派遣先が労働者派遣を受けた派遣労働者について、当該労働者派遣の終了後、1年間は雇用しないこと」等を定める契約は原則として締結できません。

派遣労働者に係る雇用制限の禁止の意義

派遣労働者に係る雇用を制限する契約の定めは、憲法第22条により保障されている労働者の職業選択の自由を実質的に制約し、労働者の就業機会を制限し、労働権を侵害するものであり、派遣元事業主と派遣労働者間における派遣先に雇用されない旨の定め、あるいは、派遣元事業主と派遣先間における派遣先が派遣労働者を雇用しない旨の定めをすることは禁止されると解されます。

このような契約の定めは、一般の雇用関係の下にある労働者についても、公序に反し、民法第90条により無効とされており、仮に契約上そのような定めがあっても、契約の相手方である派遣労働者又は派遣先はこれに従う必要はないこととされています。

なお、禁止されるのは雇用関係の終了後、雇用し、又は雇用されることを禁ずる旨の契約であって、雇用契約の終了以前(特に期間の定めのある雇用契約においては当該期間内)について、派遣労働者を雇用し、又は雇用されることを禁ずる旨の契約を締結すること自体は、許容することができるものであることとされています。 

「正当な理由」は、競業避止義務との関係で問題となりますが、雇用契約の終了後特定の職業に就くことを禁ずる定めについては、次のように考えられています。

  • 労働者が雇用関係継続中に習得した知識、技術、経験が普遍的なものではなく、特珠なものであり、他の使用者の下にあっては、習得できないものである場合には、当該知識、技術、経験は使用者の客体的財産となり、これを保護するために、当該使用者の客体的財産について知り得る立場にある者(例えば、技術の中枢部に接する職員)に秘密保持義務を負わせ、かつ、当該秘密保持義務を実質的に担保するため雇用契約終了後の競業避止義務を負わせることが必要である場合については、正当な理由が存在するといえる。
  • 具体的には、制限の時間、場所的範囲、制限の対象となる機種の範囲、代償の有無について、使用者の利益(企業秘密の保護)、労働者の不利益(職業選択の自由の制限)、社会的利害(独占集中のおそれ等)を総合的に勘案して正当な理由の存否を決定する。

しかしながら、派遣労働者が、もともと他社に派遣され就業するという性格を有することからすると、このような正当な理由が存在すると認められる場合は非常に少ないと解されています。

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