人材採用の方法が多様化するなか、「職業紹介事業」を自社で行うことを検討する企業が増えています。特に「有料職業紹介事業」を始める場合は、法律上の手続き(許可)や運営体制の整備が必要です。本記事では、有料職業紹介事業と無料職業紹介事業の違い、許可の要点、そして実務的にスムーズに進めるための申請代行について、事業者の立場に立って分かりやすく説明します。
解説ナビ
有料職業紹介事業と無料職業紹介事業の違い
- 有料職業紹介事業:求職者または求人者から手数料や報酬を受けて職業紹介を行う事業。法の規定により一部の職種は紹介制限があります。※法律上の許可が必要。
- 無料職業紹介事業:対価を受けない職業紹介。事業形態や対象によっては届出や要件が異なります(特別法人等の取り扱いなど)。
有料か無料かで許認可、手続き、運営ルール(個人情報管理、手数料の徴収方法、職種制限など)が変わります。事前に正しい区分を確認しないと、違法な運用リスクや行政対応の負担が生じます。
1.有料職業紹介事業の特徴
- 定義:求人者または求職者から手数料や報酬を受け取り、職業の紹介を行う事業。
- 根拠法:職業安定法第30条以降。厚生労働大臣の「許可」が必要。
- 対象:幅広い業種・職種が対象だが、一部の職種は制限あり。
メリット
- 収益性が高い:紹介手数料を収入源とするため、ビジネスモデルとして成立しやすい。
- 採用ニーズが高い業種で強み:専門職や人材不足分野で需要が大きい。
- 継続的なビジネス展開が可能:人材派遣事業と併用すれば、顧客企業への提供価値が広がる。
デメリット
- 許可要件が厳しい:資産要件(基準資産500万円以上など)、職業紹介責任者の設置などが必須。
- 運営コストがかかる:職員の研修、個人情報管理体制、許可更新(3年以後5年ごと)など継続的な対応が必要。
- 法令遵守リスク:手数料設定や紹介制限違反、個人情報管理違反で行政指導を受けるリスクがある。
1.無料紹介事業の特徴
- 定義:対価を受けずに行う職業紹介事業。
- 対象者:学校、NPO、社会福祉法人、自治体、ハローワーク等が多い。
- 手続き:基本的には「届出制」で、許可ではなく比較的ハードルは低い。
メリット
- 社会的意義が大きい:就労支援、地域活性化、学生や高齢者の就職支援など公益性が高い。
- 費用負担が少ない:報酬を取らないため利用者にとって経済的負担がない。
- 行政や助成金との親和性:福祉的事業や公的施策と連携しやすい。
デメリット
- 収益性がない:対価を取れないため、事業としては直接的な収入にならない。
- 持続可能性に課題:助成金や寄付金、母体組織の資金に依存する場合が多い。
- 事業範囲が限定的:営利目的の企業が無料紹介を行うことはできない。
収益を目的としたビジネス展開を考えるなら「有料職業紹介事業」が適していますが、許可要件や法令遵守の難易度は高いです。社会貢献や特定団体向け支援を目的とするなら「無料職業紹介事業」**が向いていますが、収益化が難しく運営基盤が必要です。
貴社がどちらの方向を目指すかによって、「許可取得」か「届出」かの選択が変わります。
有料職業紹介事業の「許可」取得のポイント
- 法的根拠・定義の確認:有料職業紹介事業は職業安定法に基づき、厚生労働大臣(地方では労働局)による許可が必要です。
- 必要書類の準備:申請書(様式第1号)、事業計画書、定款(事業目的の記載)、登記事項証明書、代表者・役員の住民票や履歴書、財産的基礎に関する資料など、多岐にわたる書類が要求されます。書類の不備は差し戻しの主要因です。
- 要件(財産的基礎・管理体制):事業所ごとの基準資産、現金預金の保有、職業紹介責任者の設置・講習履修、個人情報管理やプライバシー確保の体制構築が重要です。これらは書類提出時に確認されます。
- 実地調査と期間:労働局の実地調査が入ることがあり、対応の準備が必要です。通常、申請から許可交付までは状況により数ヶ月(目安2〜3ヶ月)を要するケースが多く、問い合わせ対応や追加資料提出に時間がかかることがあります。
職業紹介事業の開始を検討中の方、許可申請や届出、申請代行のご相談はHRストーリーズ社会保険労務士法人へ。まずは【無料相談】で現状の確認と最適な進め方(許可が必要か、必要書類、スケジュール、費用見積)をご提案します。お気軽にお問い合わせください。
