許可申請には、資本金や事業所の面積、派遣元責任者の選任など、多くの要件を満たす必要があります。これらの要件の中でも、特に重要でありながら見落とされがちなのが、「専ら派遣の禁止」というルールです。

このルールを深く理解していないと、せっかく許可を取得しても、事業運営の中で知らず知らずのうちに違反を犯し、最悪の場合、事業許可の取り消しといった重大な事態を招くリスクがあります。本記事では、この「専ら派遣」がなぜ法律で禁止されているのか、どのような場合に違反と見なされるのか、そして健全な労働者派遣事業を運営するために貴社が知っておくべきポイントを、わかりやすく解説します。

「専ら派遣」とは何か?法律が禁止する理由

「専ら派遣(もっぱらはけん)」とは、特定の企業にのみ、または特定の企業グループにのみ、恒常的に労働者を派遣することを指します。

労働者派遣事業の根幹をなす「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(通称:労働者派遣法)」は、労働力の需給を適正に調整し、派遣労働者の雇用の安定と福祉の増進を図ることを目的としています。

しかし、特定の企業に専ら労働者を派遣する形態は、以下の理由からこの法律の目的に反すると考えられています。

  • 労働者の保護の観点:特定の企業とのみ取引する場合、派遣労働者のキャリア形成の機会が限定されてしまいます。多様な職場で経験を積む機会が失われ、派遣労働者の職業選択の自由が制限される恐れがあります。
  • 雇用の安定の観点:特定の企業が、自社の都合の良い時にだけ労働力を確保するための手段として、子会社のような形で派遣会社を設立・利用するリスクがあります。これは、正規雇用労働者の代替となり、雇用の不安定化を招く可能性があります。

このような背景から、労働者派遣事業の許可要件として「当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと」が定められているのです。

「専ら派遣」と判断される具体的な基準

「専ら派遣」に該当するかどうかは、単純に取引先の数だけで判断されるわけではありません。以下の要素を総合的に考慮して、事業の実態が問われます。

  1. 事業目的としての記載
    会社の定款や登記簿謄本などの事業目的に「特定の企業への労働者派遣を専ら行う」旨の記載がある場合。
  2. 派遣先の確保努力の有無
    新規の派遣先を開拓するための営業活動や広告宣伝活動を、客観的に行っていない場合。特定の企業からの依頼を待つだけで、事業努力が欠如していると見なされる可能性があります。
  3. 依頼の拒否
    特定の企業以外からの労働者派遣の依頼を、正当な理由なくすべて拒否している場合。
  4. グループ内派遣の8割規制
    特に注意が必要なのが、グループ企業内への派遣です。労働者派遣法では、派遣元事業主がグループ企業に派遣する労働者の総派遣時間数が、全派遣労働者の総派遣時間数の8割を超えてはならないと定められています。

    この規制の対象となる「グループ企業」とは、親会社、その子会社、連結決算の対象となる会社など、厚生労働省令で定められた範囲です。ただし、60歳以上の定年退職者に対する派遣は、この規制の対象外となります。

違反した場合のペナルティとリスク

「専ら派遣」と判断された場合、以下の様な厳しい措置が取られる可能性があります。

  • 事業許可の取り消し
  • 事業停止命令
  • 是正勧告

これらの措置は、事業の継続を不可能にするだけでなく、企業の信用失墜にもつながる重大なリスクです。労働者派遣事業を健全に運営していくためには、常に「専ら派遣」に該当しないよう、事業運営の実態に注意を払う必要があります。

労働者派遣事業の許可申請や、日々の運営における法務相談は、専門的な知識が不可欠です。「労働者派遣事業の許可要件を満たしているか不安」 「グループ内派遣の8割規制について、自社のケースではどうなるのか知りたい」 「専ら派遣と判断されないための事業運営について相談したい」。

このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、HRストーリーズ社会保険労務士法人にご相談ください。貴社の状況を丁寧にヒアリングし、法的なリスクを回避しつつ、事業の成長をサポートするための最適なアドバイスをご提供いたします。

初回のご相談は無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。