適用除外業務とその具体的な範囲
次の業務では、労働者派遣事業を行うことができません(労働者派遣法第4条)。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院等における医療関係業務
港湾運送業務は、港湾労働法(昭和63年法律第40号)第2条第2号に規定する港湾運送の業務及び同条第1号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として政令で定める業務をいいます。
適用除外業務の範囲は、下記の範囲となりますが、判断が難しいため、管轄の都道府県労働局や港湾局等で慎重に確認することをお勧め致します。
- 港湾労働法第2条第1号に規定する港湾(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸及び関門)における同条第2号に規定する港湾運送業務
- 港湾労働法第2条第1号に規定する港湾以外の港湾における港湾運送業務
ただし、港湾運送事業を営んでいる事業主は、港湾労働法第12条により、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、港湾運送業務に労働者派遣を行うことができます。
建設業務は、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務をいいます。
適用除外業務の範囲は、「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務」をいいますが、この業務は建設工事の現場において、直接にこれらの作業に従事するものに限られます。したがって、例えば、建設現場の事務職員が行う業務は、これによって法律上当然に適用除外業務に該当するということにはなりませんので留意が必要です。同様に施工管理技術者なども適用除外業務にはなりませんが、派遣労働者が従事する業務の一部に「建設業務」に該当する業務が含まれている場合も違法な労働者派遣となりますので事前に十分な確認が必要です。
施工管理技術者とは、土木建築等の工事についての施工計画を作成し、それに基づいて、工事の工程管理(スケジュール、施工順序、施工手段等の管理)、品質管理(強度、材料、構造等が設計図書どおりとなっているかの管理)、安全管理(従業員の災害防止、公害防止等)等工事の施工の管理を行ういわゆる施工管理業務に従事する者をいいます。
なお、工程管理、品質管理、安全管理等に遺漏が生ずることのないよう、請負業者が工事現場ごとに設置しなければならない専任の主任技術者及び監理技術者については、建設業法(昭和24年法律第100号)の趣旨に鑑み、適切な資格、技術力等を有する者(工事現場に常駐して専らその職務に従事する者で、請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあるものに限る。)を配置することとされていることから、労働者派遣の対象とはならないものとされていることに留意しなければなりません。
林業の業務は、造林作業(①地ごしらえ、②植栽、③下刈り、④つる切り、⑤除伐、⑥枝打、⑦間伐)及び素材(丸太)生産作業(①伐採(伐倒)、②枝払い、③集材、④玉切り(造材))に分けることができますが、このうち造林作業の①地ごしらえの業務については建設現場における整地業務と作業内容が類似していること、②植栽の業務については土地の改変が行われることから、いずれも労働者派遣法の解釈としては建設業務に該当するものとされています。
一方、造林作業の③下刈り、④つる切り、⑤除伐、⑥枝打及び⑦間伐の各業務及び素材(丸太)生産作業の各業務については、いずれも建設業務と類似する点は認められないため、建設業務に該当せず、労働者派遣事業の対象となるものとされていますが、一部に「造林作業の禁止業務」に該当する業務が含まれている場合も違法な労働者派遣となりますので事前に十分な確認が必要です。
警備業務は、警備業法(昭和47年法律第117号)第2条第1項各号に掲げる業務をいいます。
警備業務に相当する業務は、次に掲げる業務をいいます。
- 警備対象施設(事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
- 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
- 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
- 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務
派遣労働者が従事する業務の一部に上記の禁止業務のうちいずれかの業務が含まれているときは、全体として違法な労働者派遣となりますので注意が必要です。
社労士
病院等における医療関係業務につきましては、次の機会に説明させていただきます。